即戦力がつく英文法

『即戦力がつく英文法』(DHC) の内容を補足していきます。

『即戦力がつく英文法』に対する否定的なレビューのご紹介

『即戦力がつく英文法』のアマゾンでのレビューは通常と異なり、肯定派12対否定派11ときれいに分かれ、珍しいことに真ん中の三つ星がゼロです。

 

肯定派は普通ですが、否定派のレビューの内容が異常です。アマゾンに対して、本の内容のレビューに名を借りた断定的判断が中心で、著作者本人の批判ではありませんかと申し入れましたが、問題なしとの態度です。

 

そこで、ここに掲載して、みなさまに見ていただく一方で、法務省に人権救済を申してました。

 

以下、引用・・・

 

アマゾンでの否定的なレビュー

9件中1 - 9件目のレビューを表示(星1つ). すべてのレビューを表示

5つ星のうち1.0目指した方向性は評価できるが、あまりにもまとまりに欠けわかりにくい

投稿者wholovesthesun2015年3月17日

形式: 単行本

5文型を中心とするような旧態依然とした学校文法に代わるものとして新たな文法を提示しようとする著者の姿勢は非常に期待を持たせるものであるのだが、本書はあまりにも残念なものであった。以下、その残念な理由である。

 

1.構成が分かりずらい

 

 分量の多い書籍であり、最初から最後まで通読するタイプの書籍ではないと思うが、どこに何が書かれているのかが非常にわかりづらい。独自の構成・用語を使っているために、何かを調べたいときにどこを参照していいかがすぐには分からない。たとえば、「言いたいことAに続く言いたいことBを同格で、あるいは従たるものとして扱う」という項目があるが、内容は「等位接続詞」と「従位接続詞」についての項である。「等位接続詞」と「従位接続詞」といった用語を使いたくないがためにこのような項目名にしているのかと思いきや、本文中では普通には「等位接続詞」と「従位接続詞」という言葉を使っており、わざわざわかりにくい項目名にする意味が理解できない。

 

2.索引がない

 

 ただでさえ分かりにくいにもかからず、さらに致命的な点としては索引がないこと。この手の書籍で索引がないというのは通常考えられない。

 

3.内容の難易度がバラバラ

 

 何の説明もなく、いきなり「スル的表現」「ナル的表現」(p.49)という専門用語が出てくるかと思えば、かなり基本的なことを説明していることもある。英語研究者の研究について多く言及しているが、「誰々の研究によれば」というだけで具体的な文献が明らかにされないことが多く、いったいどの文献に述べられているのかも不明な場合が多い(巻末の参考文献にも載っていない)。一般向けではなく、研究者向けでもなく、ではいったいだれに向けて書いているのか、と疑問に感じずにはいられない。書籍の最初にターゲット読者を説明しているが、適切とは思えない。

  

4.文章が読みにくい

 

 親しみやすさを出すためか、基本的にですます調でかかれてており、口語的な表現が使われているが、やわらかすぎると感じる。厳密性が求められる文法というものを扱う書籍でこのような文体はなじまないと思う。また、文章自体が必要以上に長くて読みづらい場合が多い。 「時制上のデフォルトは現在形です」(p.68)、「外界での経験に対するリアクションを」(p.47)、などのような必要性に疑問の残るカタカナ語の多用も読みづらくさせている原因の一つである。

 

5.誤植、表現の揺れ

 

 他の方も指摘されているので書かないが、誤植や表現の揺れが多い。たとえば、上述した「スル的表現」「ナル的表現」は別のページでは「する的」「なる的」とひらがなで書かれている。

 

 著者は著者のブログにおいて5文型を批判したうえで、こう述べている(5文型が)「今でも教育現場で通用しているのは、単に教えやすいからということのように思えます」。「教えやすい」ということは「理解しやすい」ということでもあるだろう(イコールではないにせよ)。本書と比べれば、フォレストなどの英文法書に代表される「教えやすい」英文法のほうがまだマシである。

 

 私は旧態依然とした学校文法に代わる新たな文法書の登場を心待ちにする者の一人であるが、本書を読む限り著者にはその能力は無いように思う。残念ながら。

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5つ星のうち1.0ターゲットのB2の方にとっては☆1、上級者にとっては☆2ぐらい

投稿者Amazon カスタマー2015年1月22日

形式: 単行本

1/24 加筆、修正

 

私の英語能力については、海外在住経験はないものの、日常的に仕事で英語を使っており、TOEICは満点をとっています。(文言を覚えていないものの)「何もわかってないバカが適当に書き散らしている」といったニュアンスのことを著者がTwitterで主張していたので、英語の実力も書き添えた次第です。

 

それから、著者の言動、人格とそのOutputの質とは別だと考えてます。実際私はこの著者の本を他にもいくつか買っています。つまり、言動から徒に評価を下げているわけではありません。

 

本題です。

 

本書に価値が全くないとは言いませんし、実際に私も価値がありそうだと考えたからこそ(割と悩んだのですが)購入しました。しかしレーティングは1から1.5ぐらいだと思います。2択なら1です。

 

  1. ターゲット層のミスマッチ

 

私が1月に本書を買うまでの間にすでにレビューの中ではターゲット層と合わないという批判は多く見られ、「CEFRでB1が対象なら」と書かれている方が何人かいらっしゃったかと思います。この「B1が対象」なのかどうか、買うまでは確認できていませんでしたが、なんと前書きの冒頭に「この本が目指すのは、ひととおり英語(特に中学英文法)を終えた人が、CEFRのB2レベル(中級の上)まで行けるようお手伝いすることです。」と明記されています。つまり、B1(以下)が対象なのでしょう。

 

B1以下が対象であれば、徒に難解で情報量が多すぎること、タイトルで謳っている「即戦力がつく」とはとても評価できないことから、B1以下の人にとってのこの本の評価は5段階で1と考えています。著者がけなしているフォレストのほうがよほど役に立つことでしょう。

 

情報量についてはこの本を手にとってみれば一目瞭然ですが、難解さについても一例を示します。27ページにSVCの事例としてappearを使った例文が出ていますが、たとえばこの例文に出てくるsprainedという単語をB1以下の方のうちどれぐらいの方が知っていますか?

 

Wordcountという、コーパスによって個別の単語の出現順位が確認できるWebサイトによれば、sprainは出現順位49,510位、sprainedは37,666位ですが、この3万語レベル、4万語レベルの語彙を知っている人はB1, B2にはあまりいないでしょう。著者のような英語の達人であれば、もう少し簡単な語彙を使って例文を構成することができたはずですが、全体的にかなり難しい語彙、表現が散りばめられています。また、訳文は出ていますが語注は出ていません。したがって、B1, B2ぐらいのの方にとってはかなり難しい用語が多数出てくる本と言えると思います。

 

一方でこの本について高い評価をしているレビュワーの方がいらっしゃいますが、この方々はおそらく英語学習者としてはかなり実力が高い方なのだと思われます。実際にこの本で得られるであろう知識、気付きは色々とあろうかと思います。反面、こういったレベルの方からすると徒に初歩的な内容が多々含まれており、これも「読みづらい」とされる一因だろうと思います。このレベルの方にとってはこの本の評価は5段階で2か2.5ぐらいかなと思います。

 

従来にないタイプという評価は私も同意するのですが、上級者レベルになると海外の(英語で書かれた)文法書にあたれるため、競合の範囲が広がってきます。その中で上位と言える評価ができるかどうかは疑問に思っています。

 

  1. 構成、読みやすさの問題

 

読みづらさ、情報量ということで言うと、Grammar in Useのようにレベル別に分冊してあれば、ビギナーからしても上級者からしてももう少し読みやすいものになったかもしれません。

 

ちょっとしたTipsを示す際に親指を上にあげたような形の記号が使われてますが、このTipsのコーナー、文字通りTips的なちょっと細かいけどこういった情報も有用だといった情報と、(B2レベルから見ても)ものすごい初歩的なことが混在しています。せめて記号を使い分けていればいいんですが、混在しているのでますます読みづらい一因となっています。

 

この本に限りませんが、本筋の部分だけ読んで細かいTipsは(消化不良になるので or 時間節約のために)読み飛ばそうという人も結構多いんじゃないかと思います。ところが、どうでもいい(ものすごく初歩的な)ことを書くときも、あるいはちょっと有用かもしれないことを書くときも同じ記号が使われているので読みづらくなっています。(本屋さんで手にとって見ればわかりますがこのTipsはかなり多いです。)

 

それから誤植の類、著者が「たったこれしかない」と暴れているのを見かけましたけど出版社が出している正誤表以外にもありますよ。まだ読んでいる途中ですがたとえば89ページの例文、上から3つ目。これは見るからに例文差し替えの際に和訳を差し替えなかった例ですね。他にもありますよ。このレビューを書いている1/22時点では出版社の正誤表には出てませんでしたけど。

 

この著者が出している他の本の中にはもっと高い評価をしている本もあるのですが、この本については低い評価となりました。

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5つ星のうち1.0わかりづらい上に見づらい

投稿者キタムラケンタVINEメンバー2014年12月30日

形式: 単行本

著者がTwitterで学習者に有益な情報を発信しているのを見て購入を決めました。

感想はタイトルの通り、日本語がまどろっこしくてわかりづらい上に,

ページの関係でしょうか、級数が小さく、行間も詰まっており非常に見づらいです。

ところどころためになることが書かれているのですが、砂金すくいのようなものでストレスがたまります。

もちろんその砂金すくいを楽しめる「専門家」もいるのでしょうが、一般の学習者は手を出さない方が賢明でしょう。

著者は旧来の文法書(フォレストや一億人の英文法など)を批判していますが、

こんな本を出しておいてよく言えるなと思ってしまいました。

 

誤植については著者がアフターサービスと称して開設したブログに数十にのぼる誤植を載せていました。手違いがあったということで現在は誤植一覧は非公開になっていますが、誤植デマを流したのは他ならぬ著者です。

 

なぜこの本が読者に受け入れられずレビューが炎上したのかよく考えてから次の本を書いて欲しいです。そうじゃないと本を出すたびに低評価がつくのでは?

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5つ星のうち1.0説明が分かりづらく、誤字脱字も多すぎる

投稿者Amazon カスタマー2014年12月29日

形式: 単行本

とにかく説明が分かりづらく、理解するのにとても時間がかかる。そのような膨大な時間は、正直、ほとんどの社会人にはないだろう。また、誤字脱字も多い。もう少し、学習者の為の視点を持って欲しい。特に、発売後に著者がtwitter等で「アフターサービス」と称して、誤字脱字の一覧をまとめているのには驚いた。それだけのボリュームがあるのであれば、事前の校正の段階で気付ける筈であり、そのまま発売したのは、著者と出版社の怠慢と言わざるを得ない。全くのお金の無駄であった。返して欲しい。

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5つ星のうち1.0読みにくい、わかりにくい。

投稿者Acc2015年1月5日

形式: 単行本Amazonで購入

他の著書、著者のことを散々こき下ろしていた著者の著作。期待していましたが、説明がまどろっこしくこれを本人がわかりやすいつもりで書いているのなら、学習者にとっては困りものです。特に自分のような英語に苦手意識がある人間には精神的トラウマになるほどハードルの高さを感じました。誤植、誤字もひどい。ご自身での弁解も言い訳がましく見ていて痛々しい。専門家なのはわかりますが、学習者目線に一切降りる意識がない。上から目線で大変しんどい。

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5つ星のうち1.0今までにない新しい文法書ですが

投稿者ゆあごーるど2014年12月31日

形式: 単行本Amazonで購入

発売前からとても楽しみにしていました。

内容は今までの文法書とは違う切り口でとても新鮮で面白いものです。

でも、これまでに出された星の数ほどある文法書を勉強していれば必要かどうかはわかりません。

個人的な考えですが文法は大西泰斗さんの『一億人』と『実践ロイヤル』(+フォレストなどの基礎的な総合英語)が

あれば良いし、読み物としておまけで読むのが良いかと思いました。

後は誤植がたくさんあるのは仕方ないとして、Amazonで早期予約した方だけが手にできた

ページ数調整のため泣く泣くカットした準動詞の「完全復刻版」をすべての購入者の為に公開していただきたいです。

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5つ星のうち1.0うーん

投稿者jiro2015年1月5日

形式: 単行本

筆者がツイッターで、アマゾンのレビューはひどいと書いているが、そんなことはない。わかりづらい。

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5つ星のうち1.0誤植一覧

投稿者bbb2015年1月11日

形式: 単行本

p29 11行目(soundの項目)

(×)Her voice

(○)His voice

 

p53 7行目

(×)カレーチキン

(○)チキンカレー

 

p75 3行目

(×)Where do we change trains.

(○)Where do we change trains?

 

p162 下から9行目

(×)on Monday?

(○)on Monday.

 

p200 下から5行目

(×)provide

(○)provides

 

p205 下から2行目

(×)your clothes.

(○)your clothes?

 

p262 下から8行目

(×)how's that possible.

(○)how that's possible.

 

p404 下から4行目

(×)旅好

(○)旅行

 

p428 下から14行目

(×)小学英語義務可

(○)小学英語義務化

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5つ星のうち1.0誰に向けて書かれた本なのか

投稿者english2016年2月20日

形式: 単行本Amazonで購入

まず、日向さんは、日本は、ノーベル賞を輩出するなど基本的に優秀だが、英語だけは駄目だと言ってますが、それは違うと思います。まず第一に日向さん本人が、ネイティブをも凌駕する圧倒的な英語力をお持ちで、それだけでノーベル賞級でしょう。日向さんレベルに英語ができる人は多くないかもしれませんが、20人くらいはいるでしょうから(日向一派に限っても)、それだけで日本の英語力は随分高いと評価することができるのです。さて、本書ですが、星1つにするか、星5つにするか、ずいぶん悩みましたが、結局星1つとしました。日本人の大多数が本書を手に取って役に立つとは思えないからです。本書は、日向さん本人も認められておる通り、英語の専門家からは非常に高い評価を得ています。一方、TOEIC900点台というような英語力が極めて貧弱な方たちからは評価が芳しくありません。FORESTなどで英語を学んでいる人にとっては、本書はレベルが高すぎて手がでないでしょう。日向さんは、せっかく日本人としては稀に見る英語力をお持ちなのですから、英語力の低い日本人を見たり、英語教育の悲惨さを見て、嘆いて愚痴ばかり吐いておられる生産性の低い活動をなさるのではなく、せめてその高い英語力を生かして、日本のために、世界のために活動していただきたいと思っております。ノーベル賞受賞者が、日本の庶民がニュートリノの基本理論を理解できていないで嘆く、などということはしてないでしょう?(笑)

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Action-Oriented Approachとは何か

『即戦力がつく英文法』の英文タイトルは、English Grammar: An Action-Oriented Approachとなっていますが、actionと言っているくらいですから、ヒトが主役という意味です。

伝統的なアプローチは、ヒト抜きと言うのか、英語が使われる実際の環境から切り放した上で、文法体系をまるでひとつの物体かのように捉えています。そして、形式面から分解し、しかも、一文単位で英語がどうなっているかを説明しようとします。(そうは言っても、この道は、文法用語や基本英文法を知る上で一度は通る必要があります。それに、状況はどうか、手順はこれでいいのかといった「変数」を考える必要がないので初学者の学習負担が軽くて済むというメリットもあります)

対照的に、Action-Oriented Approachは、人間中心で、文法の使い手である「ユーザー」を起点とするアプローチです。ヒトは英語を使って、何かしようとする存在であり、それに向け、どういう英語が必要かを見極め、身につけるのが自然だという発想です。

ここでは、いわゆる英文法は、自分の目的を達成しようというヒトが、一定の状況の下で、目的達成に必要な英語を使う上での要素のひとつでしかありません。ヒトが自分の置かれている状況(例えば、職場なのか家庭なのか)を意識しながら、その状況で求められる運用条件(例えば、相手の知っていることから切り出し、新たな情報を伝える)を満たす形で、英語を使うにあたっては、英文法上、どういう選択肢があり、かつ、その選択をすると、相手にどう影響するのか(例えば、相手の発言を封じたければ切り口上を使うという具合に)を知っておき、使いこなせるようにする必要があるということです。

そこで、『即戦力がつく英文法』は、第1部で、文法上の選択肢を説明し、第2部で、選択が状況に見合っているかを判別できるよう社会言語的な構図を説明し、最後に、第3部で、英語ユーザーの共通認識である、実際的運用能力としてどういうものが要求されているかを説明しています。まずは既知の事項で切り出し、「つながり」を確保しながら、伝えたい新情報を織り込んでいきながら「まとまり」のある英語と認識してもらえるためにはどうしたらいいかという手順の問題です。

この本は、ヒトが英語を使って自分の目的を果たすという現実に即して、そのプロセスに必要な英語は何かという視点で伝統英文法を再構成しているので、けっこう大変です。基本的英文法だけでなく、状況(コンテクスト)や英語独特の手順にまで気を配る必要があり、その分、英文法の知識だけで臨もうとすると間に合わなくなるからです。そういう付加的要素があるので、伝統的な文法に慣れきっている方々には抵抗があったり、理解しにくいのでしょう。しかし、CEFR自体、B2(中級の上)をクリアするためには必要な要素であり、これを超えると一気に視界が開けてくるものだと明言しています。

CEFRが上で説明したような構図にしたがってコミュニケーション能力を捉え、ヨーロッパ域内でのヒト・モノ・カネ・情報が移動が盛んになるよう言語観の統一を図りはじめた1970年代でのヨーロッパでも、いわゆる文法訳読を重視する人々からかなりの抵抗があったと言います。しかし、今ではそれも克服され、コミュニケーション能力=単語・文法知識+社会言語能力+実際的運用能力が事実上の標準になっています。

だからこそ、ケンブリッジ英検や、そのビジネス英語版であるBULATS、さらにはフランス語やドイツ語の検定なども、そろってCEFR準拠を打ち出しているのです。

読みこなすのが大変だとは思いますが、ご自分の英語力が頭打ちだと感じている方にこそ現状打破のために読んでいただきたいと思っています。オルテガ・イ・ガセット(哲学者)も、Effort is only effort when it begins to hurt.(辛いなと思い始めるくらいでないと、そもそも努力していると言えない)と言っているくらいですから、一度は辛いのを我慢して通読してみてください。

ハリデイ流機能文法とCEFR

『即戦力がつく英文法』はハリデイ流機能文法とCEFR(欧州評議会加盟の47ヶ国が言語学習・教授・評価の透明性と首尾一貫性を確保すべく採択している言語モデル)を二つの柱としていますが、両者の関係を説明できたらと思っています。

CEFRはいきなり出来たものではなく、一方で、コンテクストを重視する言語学者の流れを汲んでいます。人類学者のMalinowskiに始まり、それに感化されたFirth、そしてHallidayという流れです。他方で、Hymesから始まり、Canale & Swainが発展させ、それを英語教育に取り込む努力をしたvan Ek, Trim, Wilkins等のコミュニケーション学派とでも言うべき流れをも汲んでいます。

ひとまずコンテクスト重視の流れを図解するとこうなります。なぜ人類学者のMalinowskiがと思われるでしょう。彼は、パプアニューギニアの北方にあるTrobriand Islandsでのフィールドワークを進めるにあたり、最初は宣教師たちが残してくれた単語集をたよりにコミュニケーションを図っていました。ところが、単語帳の言葉を額面通りに受け止めても、実際の会話は言葉が交わされる状況あるいは話し手たちが念頭においている話のテーマ、つまりはコンテクスト次第であることに気づき、研究を深めました。

(ご興味のある方は、こちらで原書を読めます。Part Sixがおもしろいと思います)

 

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コミュニケーション重視派の流れはこうです。

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以上のことをまとめると、こうなります。

 

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Language Functions Revisited (CUP) によると、CEFRの起案グループの一員であるWilkinsは、HallidayやHymesらの考え方を直接取り込むことをしなかったものの、言語学習者のニーズに照らし、優先して教え、学ばれるべき事項は何かを確定していくに当たり、自在に取捨選択し、この結果、文法本位の既存型シラバスを土台に伝達されるべき意味内容により大きなウェイトが置かれる新たなシラバスを案出したとされています。

プロトタイプ制作グループとは、CEFRの前身である、Waystage (初級)、Threshold(中級)、Vantage(中級の上)を制作したvan EkとTrimたちのグループのことです。このシリーズ自体は英語教育を念頭に置いていますが、Thresholdは、機能的言語使用を意識した外国語教育のモデルとして高く評価され、のちのちフランス語版とドイツ語版が制作されています。

以下はCEFRが描くコミュニケーション能力の図解ですが、上で説明した、(コンテクスト派」「コミュニケーション派」の流儀が随所に反映されているのを見てとれます。

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既存英文法と機能文法の違い

伝統的英文法、特に中学英文法は名詞、動詞といった基本的品詞分類その他の文法用語をおさえ、かつ、平叙文や疑問文の作り方を知るといった基本を学ぶのに便利です。一方、『即戦力がつく英文法』が念頭においている機能文法はその次のステップへと案内するものです。

本来であれば、機能文法の違いを正面から取り上げたかったのですが、それをやると、優劣を争っているなどと無用の誤解をまねきかねません。そこで、本書では、ハリデイ流機能文法そのものの解説は省いてあります。

そうは言っても、やはりハリデイ流機能文法がどういうもので、既存文法とどう違うかを知っておき、その上で、本書を読まれた方がおそらく何倍にも楽しめるかと思いますので、あらためてご紹介します。

ハリデイ流機能文法を学校英文法を含めての伝統的英文法と比べると、以下のように三つの角度から違いを浮き彫りにすることができます。

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目指す役割での違いは、伝統的英文法の担っていた歴史的な役割に由来しています。18世紀イギリスで人々が様々な地方から働き手として都市に集まってきたのはいいものの、あまりに方言がすごくて、コミュニケーションが成り立たず、標準化する必要が生じました。「標準英語」というものが観念されるようになったということです。その標準化の牽引役は書き言葉でした。この点、今のアラビア語の世界と似ています。同じ中東圏でアラビア語を話していても、国が違えば話し言葉は通じないことが多いのに、書き言葉は聖典コーランのおかげで共通だという構図とそっくりです。

英語の場合、「標準英語」の基準となったのはバイブルでなく、ロンドン周辺在住の白人中産階級が使う英語でした。その意味で世の伝統的文法書が描いている英語は、イギリスの "white, middle-class people"  の英語です。(ちなみにアメリカのネイティブ向け文法書はたいてい書き言葉の文法書です)

ルール集ですから、以下のように英語の実際とかけ離れていても、「正しい英語」とされるものが厳しく指導され、テストされることになります。

  • 前置詞でセンテンスを終えてはならない。✕ This is something which I will not put up with. ○ This is something with which I will not put up.
  • TO不定詞自体を副詞で分割することはできない:✕ to boldly go where no one has gone before(有名なスタートレックの一節)○ to go boldly where no one has gone before
  • AND等は2文をつなげる接続詞であり、そうである以上、単文の冒頭で使ってはならない。 ✕ And you should not begin a sentence with a conjunction.

ハリデイ流機能文法はラテン語文法から来ている細かな規則なぞ気にすることがありません。機能文法にとっての言葉は、人に何かしてもらいたいなら「命令文」、情報を求めるなら「疑問文」というふうに、人は自分のニーズに合わせてどういう文法形式を選んでいるかという問題です。あるいは、You can do this. と You should do this. とでは、人はどう受け止め方が違うのか。さらには、自分の発言の調子を一段と弱め、相手が口をはさみやすくするためには possiblyとprobablyとではどう違うのかといったことを通じて、コミュニケーションに供される文法上の選択肢にどういうものがあり、その選択は相手にどう映るのかということを体系化して、ユーザーの道具箱を可視化しようとします。

次に、伝統的英文法は言葉の使い手である人間や社会関係に目を向けませんから、もっぱらセンテンス単位で、その内部構造の解明に努めます。これ対して、ハリデイ流機能文法は、社会関係で言葉が実際に使われるコンテクスト(つまり、何の話か、相手は誰か、どう伝達されるのか)に着目しますから、そのコンテクストに適合する実際の言葉遣いがどう変容するか、あるいは変容されるべきかを見ます。例えば、同じように何かしてもらうのでも、相手が同僚か目上の人かでは言い方も変わるということです。(こういうことを念頭に本書の英文タイトルは An Action-Oriented Approachとなっています)

このようにコンテクストと使われる言葉は表裏一体の関係にありますから、コンテクストを知れば、表現形式も予め想像がつくということでもあります。例えば、「これ、契約書なんだけれど、目を通してくれない」と頼まれれば、shallが連続し、定義されている名詞がすべてキャピタライズされている、ああいう文書かと想像がつきます。

最後に、伝統的英文法は、説明に際してセンテンスが基本単位です。文法体系の要素である上、教えやすいという事情も手伝っています。対照的に、ハリデイ流機能文法は複数のセンテンスが単位です。コミュニケーションでの「やり」「とり」が単一センテンスで済むはずもありませんから、当たり前と言えば当たり前の話です。このことを意識して、『即戦力がつく英文法』でも、コンテクストがわかるよう、複数センテンスだとゴタゴタしてわかりにくくなる場合を除いて、原則として例文は2センテンス以上にしてあります。

 

 

ハリデイ流機能文法と『即戦力がつく英文法』の関係

ハリデイ流機能文法を枠組みとして『即戦力がつく英文法』を書きましたが、本家の用語をそのまま使うとかえってわかりにくいので大幅に変えています。実際、(今は変わったと思いますが)ハリデイ流機能文法を公教育の英文法に応用することにしたオーストラリアのサウスウェールズ州などは、用語は従来からの文法用語のみとし、ハリデイ流のprocess(動詞のこと)などは一切使ってはならないとのお達しを出したほどです。

本書でも既存文法書との兼ね合いも考えて用語と構成を工夫しています。

まずハリデイ流機能文法の特色のひとつとして、ワンセンテンス単位でテキスト(コミュニケーションに供されるひとまとまりの言葉)を考えずに、それが使われるコンテクストとの兼ね合いを考えるという姿勢があります。つまり以下の図で示す通り、言葉を使うということ=コンテクストに合わせて言葉を使うこととなります。

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上の黄色の部分をご覧ください。ここで示されているのは、人は言葉を使うに当って、「何の話?」「相手は?」「伝達手段は?」といった要素から成る言葉の使用環境を考えながら、ものを言ったり、書いたりしており、その使用環境に合わせてどういう単語をどう組み合わせるかを考えているということです。

第1に、「何の話」という側面では、「こういう話をしたい」という目的意識の下、「何がどうした」のかを伝えるために、しかるべき動詞を選び、対応する登場要素を並べ、さらに必要に応じて「いつ、どこで、どのように、なぜ」といった補充情報(副詞句)を添えます。この側面に焦点を合わせたのが本書の第1部です。「正確に」ということの意味は、英語ユーザーに間違いなく言いたいことを伝えるためには、動詞、名詞、副詞句などを英語の流儀で正確に配置することを要しますよということです。

第2に、「相手は?」という側面では、「相手との関係を考えて調整せねば」という目的意識の下、情報を伝えたいのか、情報を求めるのか、はたまた相手に何か提供するのか、あるいは相手からもらいたいのかに応じて、英語が用意している文法形式を選ぶ必要があります。また、相手によっては、助動詞で言葉の調子の強弱を変えたり、あるいは、probablyなどで発言を控えめにして相手が話をしやすくするといった気遣いが要求されます。こうした相手への気遣いに基いての文法上の選択肢をお見せしているのが第2部です。

第3に、「伝達手段は?」という側面では、unified whole(首尾一貫したひとまとまり)の言葉を紡ぎ出したいという気持ちに立って、話し言葉か書き言葉かに応じて、手順どおりに展開することになります。この場合、相手が友だちであれば、気楽な接続表現で済ますことができても、かしこまる必要があればフォーマルなものを選ぶという具合に、第2の側面とけっこう重なってもいます。

実際、この3側面はばらばらに扱うべきものでなく、同時並行的に扱われるべきものです。例えば、話す内容やプレゼンという伝達手段が同じでも、聴衆の性格が違えば、おのずと言葉の使い方も違ってくるという具合に、常に三要素は兼ね合いを考える必要があります。

ちなみに、上の用語を英語で言うと、こうなります。

▶ コンテクスト register

何の話? field

相手は? tenor

伝達手段は? mode

▶ 言葉の役割 function

こういう話をしたい ideational function

相手への配慮 interpersonal function

「まとまり」の作出 textual function

 

 

 

『即戦力がつく英文法』と他の文法書との比較

『即戦力がつく英文法』の性格を知らずにこれまでの文法書の一種と思って読むと面くらうでしょうから、目次の項目で違いを比較してみました。どちらがいいというのでなく、ともかくアプローチの違いを見て取れるかと思います。

 

文法書Aの構成

文の種類、動詞と文型、動詞と時制、完了形、助動詞、態、不定詞動名詞、分詞、比較、関係詞、仮定法、疑問詞と疑問文、否定、話法、名詞構文・無生物主語、強調・倒置・挿入・省略・同格、名詞、冠詞、代名詞、形容詞、副詞、前置詞、接続詞

文法書Bの構成

英語文の骨格:主語・動詞・基本文型、名詞、 修飾:形容詞、副詞、比較、否定、助動詞、前置詞、WH修飾、 自由な要素:動詞 –ING形、TO不定詞、過去分詞形、節 配置転換:疑問文、様々な配置転換 時表現:時表現 文の流れ:接続詞、流れを変える

文法書Cの構成

文、名詞、冠詞、代名詞、疑問詞、形容詞、副詞、比較、動詞、時制、助動詞、不定詞、分詞、動名詞、法、態、接続詞、関係詞、前置詞、一致、時制の一致と話法、否定、倒置・省略・強調・挿入、文の転換

『即戦力がつく英文法』の構成

正確に英語を使う(言語知識) 英語の作り、登場要素と動詞でセンテンスを捉える、BE動詞、THERE構文、IT構文、 BE動詞以外の普通の動詞、補助動詞、準動詞、動詞と時間の関係、 受動態と能動態、句動詞、名詞句、副詞句・前置詞句等、関係詞 適切に英語を使う(社会言語能力) 事実や気持ちを適切に伝える、フォーマル/インフォーマルを考える、自分の基本姿勢を明らかにする、 調子に強弱をつける、単語が持つ強弱を考える 手順どおりに英語を使う(実際的運用能力)手順どおりの運用能力とはなにか、話し言葉と書き言葉の違い、スピーキングの「文法」、話し言葉での運用手順、書き言葉での運用手順

 

参考:オーストラリアの英語教師用文法マニュアル A New Grammar Companion for Teachersの主要項目

Introduction

Language for Expressing Ideas

  • Looking at meaning: Different kinds of processes (=verbs)
  • Looking at form: the verb group
  • Who (or what) is taking part?
  • What are the details surrounding the activity?
  • Representing experience

Connecting Ideas

  • Looking at meaning: Making connections
  • Looking at form: Combining items
  • Combining clauses
  • Connecting ideas

Language for Interacting with Others

  • Patterns of interaction
  • Involvement
  • Expressing attitudes
  • Adjusting strength and focus
  • Opening up spaces
  • Contracting the interaction space
  • Interacting with others

Creating Cohesive Texts

  • Organising the flow of information
  • Cohesion
  • Features of mature written text

Revisiting the Functions of Language

 

即戦力英文法の下地である機能英文法について(3):抽象的コンテクスト

主としてライティングで意識しておく必要のある「抽象的コンテクスト」は、ハリデイ流機能文法では genre と呼ばれています。Martinという研究者によると、抽象的コンテクストとは、「段階を追う、目的意識のある社会的プロセス」です。まず社会の中で言葉を使って他の人々と関わっていく上で意識される要素ですから、その意味で「社会的」プロセス。なんでもいいという話ではなく、説得する、說明するといったことを目的としていますから、「目的意識のある」社会的プロセスです。そして、この目的に向けての行為は一足飛びにやれるものではなく、合目的的行為の積み重ねですから、「段階を追う」プロセスです。

例えば、英文契約書がそうですが、長年にわたる試行錯誤を経て、今では、冒頭に誰が契約当事者かが表示され、次に本体部分で両者の権利義務やそれを担保する手段が列記され、後半になると期間・通知法・裁判地といった「一般条項」が並び、最後に以上に相違ない旨の文言と当事者の署名が付されます。抜き書きを見せられた場合でも「ああ、契約書の一部だ」とわかるくらい、様式化が徹底しています。

こうした目的別の社会的プロセスをおおまかに図解するとこうなります。契約書の例は、この分類で行けば、「描写する」文章にはいります。

 

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こうした抽象的コンテクストがあるため、文章を作成する人もそのコンテクストで頻出する言いまわしを選ぶので、「いかにも」という感じが醸しだされ、「それらしく」つまり「サマになる」と言えます。

例えば、「本契約は両当事者が調印した日より効力を有する」と言いたいとして、This Agreement shall come into force upon execution by both Parties. という標準的な言い方をしないと「契約書らしさ」が出ません。This contract will be effective when the parties to this agreement sign this agreement. などとすると、文法的には問題がないものの、子供が契約書の真似をしているかの如き稚拙さがあり、使い物になりません。同じことで、一般にわが国の官邸や文科省の英文が「サマになっていない」のは、「官庁英語」ではないからとも言えます。

もちろん、ここでも抽象的コンテクストは具体的コンテクストとつながっているわけで、目的を意識しつつも、「何の話か」「相手は誰か」「伝達形式は何か」を総合した上で、「どういう言葉を選択して、どう言うか」が決まってきます。

よく英語圏に派遣された駐在員の奥さんたちが子供の欠席届ひとつ書けずあわてるという話をききますが、あれも、英語文化固有の様式のあることを実感させられるのに、それがどういうものか具体的にわからないからです。抽象的コンテクストと言うと日常生活と無縁な感じすらしますが、英語を使おうという以上は、隅々までその影響を受けており、常に抽象的コンテクストと具体的コンテクストを考えるようにしないと、せっかく勉強した英語の知識を応用できずに終わってしまいます。

この「抽象的コンテクスト」という言葉、『即戦力がつく英文法』の中では、374頁のチャートに入っている他、379頁、428頁、そして433頁で言及しています。