即戦力がつく英文法

『即戦力がつく英文法』(DHC) の内容を補足していきます。

ハリデイ流機能文法とCEFR

『即戦力がつく英文法』はハリデイ流機能文法とCEFR(欧州評議会加盟の47ヶ国が言語学習・教授・評価の透明性と首尾一貫性を確保すべく採択している言語モデル)を二つの柱としていますが、両者の関係を説明できたらと思っています。

CEFRはいきなり出来たものではなく、一方で、コンテクストを重視する言語学者の流れを汲んでいます。人類学者のMalinowskiに始まり、それに感化されたFirth、そしてHallidayという流れです。他方で、Hymesから始まり、Canale & Swainが発展させ、それを英語教育に取り込む努力をしたvan Ek, Trim, Wilkins等のコミュニケーション学派とでも言うべき流れをも汲んでいます。

ひとまずコンテクスト重視の流れを図解するとこうなります。なぜ人類学者のMalinowskiがと思われるでしょう。彼は、パプアニューギニアの北方にあるTrobriand Islandsでのフィールドワークを進めるにあたり、最初は宣教師たちが残してくれた単語集をたよりにコミュニケーションを図っていました。ところが、単語帳の言葉を額面通りに受け止めても、実際の会話は言葉が交わされる状況あるいは話し手たちが念頭においている話のテーマ、つまりはコンテクスト次第であることに気づき、研究を深めました。

(ご興味のある方は、こちらで原書を読めます。Part Sixがおもしろいと思います)

 

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コミュニケーション重視派の流れはこうです。

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以上のことをまとめると、こうなります。

 

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Language Functions Revisited (CUP) によると、CEFRの起案グループの一員であるWilkinsは、HallidayやHymesらの考え方を直接取り込むことをしなかったものの、言語学習者のニーズに照らし、優先して教え、学ばれるべき事項は何かを確定していくに当たり、自在に取捨選択し、この結果、文法本位の既存型シラバスを土台に伝達されるべき意味内容により大きなウェイトが置かれる新たなシラバスを案出したとされています。

プロトタイプ制作グループとは、CEFRの前身である、Waystage (初級)、Threshold(中級)、Vantage(中級の上)を制作したvan EkとTrimたちのグループのことです。このシリーズ自体は英語教育を念頭に置いていますが、Thresholdは、機能的言語使用を意識した外国語教育のモデルとして高く評価され、のちのちフランス語版とドイツ語版が制作されています。

以下はCEFRが描くコミュニケーション能力の図解ですが、上で説明した、(コンテクスト派」「コミュニケーション派」の流儀が随所に反映されているのを見てとれます。

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